[よい子は大人を困らせる]

S子ちゃんはもうすぐ1歳、赤ちゃんから子どもへ向かって大きく前進しています。立つことが多くなり、歯がしっかり見えてきて、髪の毛も伸びてきました。そこで前髪を輪ゴムで結わくと、またまた可愛らしいS子ちゃんになりました。

このS子ちゃん、保育園の中ではちょっと前までは泣くことを知らない女の子でした。「飲む寝る出す」さえ満足なら本当にいつも笑っていたのですよ。でもそれは別の表現をすれば、S子ちゃん自身が「一人の力で生きていくことが出来ない弱いなかで、生き残るために講じた本能的な戦略」として笑っていたのではないかとも思うのです。生きるために笑わざるを得なかったのです。大人から見れば、赤ちゃんが笑えば、可愛いらしく感じてお世話したくなるものです。そこを狙って笑っていたのではないかと感じています。

でも今は賢くなりました。笑うだけでなく、泣いても生きていけると確信するに至りました。何故ならば、不快な時泣くと、その不快が「治まる」ことを体験的に知り、自分のものとすることが出来たのです。そこで泣くようになりました。

今までは「笑う」という一つの表現しかできなかった人が「泣く」という表現方法を身に着けることができたことを喜びたいと思います。育つということは単純から複雑になることです。複雑になれば、大人としては、悩むことが増えるでしょう。でもそれが「育つ」ということなのではないかと思います。
「よい子は大人を困らせる」
カブトムシと戯れる子ども

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