[落ちこぼれ万歳]

川べりにある豊かな大地に散歩に出かけると、みんな目の色を輝かせます。1人ひとりの興味が違うので、全体の流れはバラバラになりますがそれぞれが、ドングリ、葉っぱ、枝、タンポポ、川、鴨、ヘリコプター、モーターボート、石ころ、日差し、風、高速道路の音、おじさん・・・・思い思いに楽しみます。
限られた時間の中での集団移動という、散歩という名の全体行動から、「落ちこぼれ」て、自分の世界に入っていく子どもたちですが、そこに意味を見つけたいと思います。少人数の保育ではのんびり歩くことができるのですよ。
今、落ちこぼれと表現しましたが、広辞苑によると落ちこぼれは、「(1)落ちてちらばっているもの(2)あまりもの。 残り物(3)普通一般から取り残された人。特に授業についていけない生徒」ということですね。少なくともプラスのイメージの言葉ではないようです。

さて、詩人の茨木のり子さんの「落ちこぼれ」という詩を紹介します。
落(お)ちこぼれ/和菓子(わがし)の名(な)につけたいようなやさしさ/落(お)ちこぼれ/いまは自嘲(じちょう)や出来(でき)そこないの謂(いい)
落(お)ちこぼれないための/ばかばかしくも切(せつ)ない修行(しゅぎょう)/落(お)ちこぼれにこそ/魅力(みりょく)も風合(ふうあ)いも薫(かお)るのに
落(お)ちこぼれの実(み)/いっぱい包容(ほうよう)できるのが豊(ゆた)かな大地(だいち)
それならお前が落(お)ちこぼれろ/はい 女(おんな)としてはとっくに落(お)ちこぼれ
落(お)ちこぼれずに旨(うま)げに成(な)って/むざむざ食(く)われてなるものか
落(お)ちこぼれ/結果(けっか)ではなく/落(お)ちこぼれ/華々(はなばな)しい意志(いし)であれ

 どうですか?いいでしょう。流れを乱さないことを教えることも大切なことではありますが、それだけでは足りないのではと思うのです。何より自分で考えて行動するという、大切な「自発性」を育むために、華々しい意志である落ちこぼれ体験が大切なのではないかと。それも人生の中でなるべく早い段階で。
詩の中では、「むざむざ食われてなるものか」とありますが、「食われないで生き延びて、いずれ反対に食わせてもらうよ」という思いを重ねることもできます。子ども達には、したたかに生きて欲しいと願うものです。

今は保育者の守りの中で、散歩中に落ちこぼれていく子どもたちですが、それをたっぷりと自覚していく保育を展開することによって、ゆっくりと、そうゆっくりとなのですが、美味しく育っていくのだと思っています。何気ないいつもの保育ですが、そこにはかけがえのない喜びがあるということを実感する今日この頃・・・
きれいなお花

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