[よりそう保育]
「小さなお友だちが持っているおもちゃを、大きなお友だちが怖い顔で取り上げました。」
一見、大きなお友だちが悪いことをしているように見えますが、実はそのおもちゃは長い時間、大きなお友だちが大切に使っていたものだったのでした。ところがちょっと手を離した隙に、通りがかりの小さなお友だちに気まぐれで奪われたのでした。
保育者が「大きい者が小さい者を力で制圧している」と受け止めたら、当然大きい者に指導が入ることでしょう。ところが内情をよく観察している保育者なら情状酌量の余地ありとなるでしょう。場合によっては反対に、小さな者へ指導がおよぶかもしれません。
「女の子が砂場でせっかく作った砂の型抜きを、他のお友だちが壊しています。」
一見、お友だちが悪いことをしているように見えますが、実は女の子は型抜きで作ったお料理をお友だちにごちそうしていて、お友だちは接待を受けお料理を食べていたのでした。
保育者が「壊している」と受け止めたら、間違えた指導となります。壊していたのではなく「美味しく食べていた」と分れば、壊すことは楽しさあふれる風景になるでしょう。
A子ちゃんB子ちゃん二人がパパさんの手を引いて保育室のある場所に案内してくれました。勝手口の近くの何の変哲もないただの床を指さして「ここ」と言って笑っています。二人ははめるタイプのブロックを一個か二個持っています。それだけです。子どもは上手に説明ができませんから推理しなければ状況がつかめません。
でもパパさんにはピンときました。二人は床のお掃除ごっこをしていて、きれいになったことを報告しにパパさんのところへ来たのではないかと。そのブロックを持ち方、それはまぎれもなく、スポンジでお掃除をしているときのような手つきだったのです。「きれいになったね」とパパさんが言うとにっこりする二人。「パパさんもお掃除手伝うよ」と言ってその辺に落ちていたブロックを手にするとB子ちゃんは洗剤をスポンジにつけるようなしぐさで、パパさんの持っているブロックに自分のブロックをくっつけてきました。
実は何日か前に同じ子が同じような手つきで壁を掃除する遊びをしていて、こすり方が強すぎて壁が傷ついてしまったことがあったのでした。それを思い出したというのが本音です。
新学期が始まって3か月、ようやく保育がしっとりとしてきました。子どもたちが育ったからでしょうか。もちろんそれも否定はしません。でも、保育者一人ひとりの子どもたちへの理解が増してきたからだとも思うこの頃です。子どもたちへの理解が増すということを「よりそう」というのだと思います。
よりそう保育を展開していきたいと考えています。