[メルヘンの世界]
領家第三公園へ梅雨の晴れ間のお散歩です。ツツジはもうおしまい、タンポポの綿毛はまだ健在、カタバミと常盤ハゼは見頃。モンシロチョウと蟻とダンゴムシとワラジムシとスズメとカワラヒワと猫。それから広い空間と固定遊具と空と雲と太陽・・・・大人の目から見れば何の変哲もないただの児童公園ですが、子どもには冒険とメルヘンの世界のようです。
T君が、モンシロチョウを追いかけています。この蝶はなぜかT君のそばを離れないでヒラヒラと飛び回るものですから、T君大興奮!つかず離れずで追いかけっこが続きます。T君は蝶を捕まえてやろうと思ったのか両手を出して叩きながら走ります。パパさんが「ちょうちょだね」と言うとT君は早速口真似を始めました。「ちょうちょ、ちょうちょ、わ〜」
やがて蝶は疲れたのか、公園の真ん中の雑草が生えているところに止まって動かなくなりました。パパさんは「蝶さんT君と遊んでくれてありがとう」と思うとともに、T君の攻撃に命を落とす蝶の運命をはかなく思いました。しかしです。なぜかT君は攻撃をやめて、止まった蝶と動きを合わせるようにとまり、じっくりと、まるで蝶を愛おしむように見つめ始めたのです。蝶とT君の距離の近いこと!パパさんはワクワクしながらそうっと近づきました。
モンシロチョウは小さな常盤ハゼに止まって、蜜を吸っていたのでした。それを目を見開いて息を凝らして見つめるT君、何てやさしい顔つきなのでしょう。幸いなことに蝶は命を奪われることなく蜜を吸い終え、やがてまた飛び始めました。完全に蝶と同調しているT君、今度は蝶を追いかけ始めました。やがてR子ちゃんも仲間に加わり蝶と戯れていましたが、しばらくすると蝶は公園の外に逃げていきました。T君とR子ちゃんはそれ以上後追いすることなく、飛んでいく蝶に手を振っていました。
ふと、ジャングルジムに目をやると、S子ちゃんがてっぺんに登って「いいお顔」をしています。パパさんはジャングルジムの傍まで行くとS子ちゃんは「きもちいい」と言ってほっぺたを突き出して目を細めて喜んでいるのです。蒸し暑いのにきもちいいとは何かの間違えではないかと思いましたが、もしかしたらと思ってジャングルジムに登ってみました。するとどうでしょう。僅か数メートル上空のジャングルジムのてっぺんでは、何とそよ風が流れていたのでした。風とお話しできるS子ちゃん。
そこにはメルヘンの世界が、確かにありました。